ジェイクールのスタッフ雑記

王位戦『羽生善治王位vs木村一基八段』第4局 盤上の支配者。その一手、達人の見切りなり

木村一基八段が羽生善治王位に挑戦している第55期王位戦。
その第4局が20日、21日と福岡の『ホテル日航福岡』にて行われました。

ここまで3局の結果は1勝1敗1持将棋。五分で迎えた第4局となります。

戦型は、先手の木村さんの7六歩から8四飛、6八と続き、矢倉が濃厚に。
駒組みは互いに入城が早く、どちらも端には手をつけず。

先手は右銀が3七から4六へ、空いた3七へ桂が跳ね、角は6八の形。
対する後手は、角が6四と腰掛け、7四歩と引き場所を確保して5三銀。

ここから後手の端歩突きに合わせて、両端はそれぞれ突き合う形に。
後手の8五歩に2六歩、先手の桂跳ねに備えた2四銀。

先手の3八飛に対して、攻めの9五歩か、守りの4二銀か。
一つの岐路でしたが、後手は攻めを選択。同歩、同香、9七歩打。
次の手は、立会人の深浦九段が直近の同形で指した、9二飛と回るのか否か。

指し手は6四歩。
6五まで伸ばせれば大きいですが、この瞬間は角道が止まってしまいます。
手番が回れば、攻めを始められる先手に対して「やってこい」の一手。

この手には控え室の反応も大きく、ツイッター解説の阿部 隆八段は驚愕しておりました。
一日目から凄い手が出ましたね。この一手の成否はいかに。

この後、先手の2五桂から、4五歩、3七銀、4四銀。
後手が5三銀型を活かして4筋を厚くしたところで封じ手となりました。

二日目。
封じ手は本命の4六歩。やはり、ここからでしょう。
同歩、4八飛に6五歩。昨日の6四歩で止まった角道に再び光が差します。

同歩に8六歩。この8筋の突き捨てに対して、先手は強く同銀の応手。
指しにくいと言われていましたが、読めれば指せる手なのでしょう。
次に9五銀で香車が取れます。

ここで後手の選択は5五歩。9、6、8筋に続いての突き捨てで、
まるで先手のような攻めっぷりですね。

1手の価値が無くなれば、先後が入れ替わっているようなものですし、
本局だと1八香の功罪なのでしょうか。

先手は8六銀を活かした7七角。角道に相手玉があるのは良く見えます。
後手は5六歩の取り込み。読みのぶつかり合いですね。

先手は攻めを呼び込む4四歩打。
受けの強い棋士らしい、攻撃的な受けですね。「読めてますよ」と。

この手が無くても後手は攻めていただけに、当然の5五銀かと思いましたが、
指されたのは3三銀。この手があるんですね。押して引いて。

ここからの後手の手順が見事というか神業というか。
先手の桂を外す2五銀、銀と交換の角切りで4六角。
一時的な駒損も何のその、飛車を追う形から手順に厚みのある、切れない攻めに。

ここで先手に手番が回り、今度は先手の攻撃ターン。
後手は受けつつ、敵陣に手を入れつつ。巧みな差し回し。

100手を超えた辺りで攻め合い模様となりましたが、
二日目のツイッター解説、杉本昌隆七段は後手良し。
先手は受けの勝負手、飛車当たりの6八金。この手を見ても先手が苦しそうに見えますね。

後手は縄を手繰り寄せて行けば勝てそうな展開。
その後手の次の一手は5九飛成。これは大丈夫なのでしょうか。
自分だけではなく、かなりの人が思ったのでは無いかと思います。

おそらく、最善手では無いでしょう。
手番が先手に回るだけに「自玉は寄らない」という確信の一手ですね。
いやあ、凄い手が出ました。本局は「驚愕」という表現を何度も使いたくなります。

この手には、木村さんも感想戦で「きたんじゃないかと思った」とコメントしておりました。
読みを看破して後手玉を寄せれば勝ち。先手のラッシュが始まりました。

しかし、釈迦の手の平なのか、追えど寄らず。
恐るべき羽生王位の読みきりでした。134手で木村八段の投了。

木村さんも8六銀から7七角など唸る手もありましたが、
それ以上に羽生さんの差し手に驚かされることが多く、凄い将棋でしたね。

これで王位戦は4局やって後手の3勝1持将棋。負けなしです。
第5局の後手は木村さん。この流れが続くのか。
楽しみに待ちましょう。

「将棋って本当に面白いな」と本局を見て改めて思いました。

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