ジェイクールのスタッフ雑記

第65回NHK杯テレビ将棋トーナメント 第4局までの感想と将棋フォーカスの話

日曜日の穏やかな午前のひととき。
皆さん、将棋フォーカスとNHK杯を見てますかー。

うんうん。全国の将棋好きな老若男女、ワンちゃんネコちゃんの声が聞こえる気がします。
自分もご多分に漏れず、ここまで4週見ております。

の割には「その話を全然書いてないじゃん」と言われると、
その通りで、何だかんだで気がつけば今日という、春眠が長すぎでしたね。

と言う訳で、一新された将棋フォーカスと第65期NHK杯の4局までの感想をざっくりツラツラと行きましょう。

【将棋フォーカス】
メインMCに『乃木坂46』所属の伊藤かりんさんを大抜擢。
初めてその話を聞いた『トヨタリアル車将棋』では「大丈夫かな?」と心配が大きかったのですが、
メディア慣れしているせいか、本人に適正があるのか、とても良い進行っぷりだと思います。

中村太地六段、山崎隆之八段が交代で脇を固めるのを見ても、
NHKの「将棋に興味をもってもらおう」という意欲が見えますね。

太地君は、棋士の中でもメディア露出の多い棋士ですが、
その対応の上手さは日に日に磨きがかかってきていて、
将棋フォーカスでのやりとりを見ていても、惚れ惚れするものがありますな。

山ちゃんは、相変わらず山ちゃんと言うか、いつも通り楽しい感じで嬉しいですねえ。
NHK杯で優勝して、知名度が上がった恩恵の話で、
「山で遭難しかけた時に、声をかけてもらって助けてもらった」って話をしてたのが、
何とも山ちゃんらしいというか、面白すぎでしょう。

佐藤さんと綾ちゃんの将棋講座は、超初心者向けからのスタートなので、ここは眺めてる感じで。
佐藤さんは前に講座をやった時に、講座の中で美濃囲いを教えていたら、
「元々は美濃囲いはあまり好きではなく採用していなかったが、採用するようになった」
と変化があったそうなので、今回の講座でも佐藤流に変化があるかもお楽しみに。

かりんさんは戸部君が中飛車の指し方を教えたのもあり、
太地君と序盤を指した際の駒組みは、綺麗に指してましたねえ。

相手の戦型に揺さぶられにくいですし、中飛車で美濃囲いは「確かに初心者向きだな」と思いました。

かりんさんは教えてもらったことを吸収できる力がありそうですし、
4週見た感じでは、とても良い抜擢ではないかと期待しています。応援しちゃいます。
将棋を見る女子が増えている中、将棋を指す女子が増えるきっかけになると良いですね。

特集もNHK杯の舞台裏とか、小学生名人戦の話とか面白かったですねえ。
舞台裏を見ると「やっぱりNHK杯もテレビなんだな~」と。
棋士が解説者として登場した際に、緊張するのも分かる気がしました。

小学生名人戦を振り返って「プロ棋士のあの人がこの人が」というのは珍しくないのですが、
中継手段が豊富になり、棋士の対局姿を見る機会が増えたのもあって、
今回はプロ棋士の小学生時代を見ていると、対局中の仕草や局後の仕草が
「この頃から変わらないんだな~」と感じた人が、まあ多いこと。

小学生だと頭の回転の早さが表面に出ていることが多くて、
改めて「やっぱり棋士になる人は、こーゆー人達なんだな」と思いました。
ちなみに羽生さんは、マイクを向けられた際のやりとりを見ていても、
子供ではない落ち着きぶりで、リアルコナン君状態でしたねえ。

対局中に相手を見る、通称「羽生睨み」も出ていましたし、いつもの勝負師な感じも。
小学生の時点で、これだけ既に完成していたというのは、驚異的というか何と言うか。
資質的な部分も大きいと思いますが、どのような環境、教育で育ったのかも気になりました。

小学生といえば、今日のフォーカスの特集で『詰め将棋』の話題を扱っていて、
今年3月に行われた『詰将棋解答選手権』で、小学生が優勝したという話もサラリと。
本当はもっと大きく扱って良い話だったのですが、今回はそこが焦点ではなかったという事でしょう。

結果は先日知ったのですが、優勝したのは関西奨励会所属の藤井君。
4月から中学生になったそうで、段位は二段。
この大会は、プロ棋士でも好きな人はいつも参加していて、
現在名人戦を戦っている行方八段や、詰め将棋で有名な宮田六段なども。

その中、唯一全問正解で優勝したのが藤井君なのです。
凄すぎというか、言葉が無いですよね。5人目の中学生プロ棋士誕生となるか。

既にフォーカスの話だけで、だいぶ書いてしまいましたが、
次はNHK杯の話を今度こそサラサラと。

【NHK杯テレビ将棋トーナメント】
司会が清水さん続投じゃないですか。
たぶん2chのどっかのスレで見たと思うのですが、
司会と読み上げが変わるって書いてあったのを鵜呑みにしてました。

フォーカスが一新したので「そーゆー路線変更かあ」と。
読み上げも室谷さんと環那さんが続投ですね。
清水さんは一年間で、肩の力が抜けてきて、立ち位置も決まってきたように。

【第一局】藤井猛 九段 vs 高橋道雄 九段
解説も森内俊之NHK杯と豪華なオープニングマッチ。
先手後手問わず、藤井さんは角交換四間飛車を採用する可能性が高いと見ていましたが、
本局は角道を止めた四間飛車から藤井システムへ。

これは「あなたは藤井システム対策を完璧に覚えていますか」という投げかけに見えます。
後手の回答はどうだったでしょう。個人的にはシステムで指して序盤がこの形だったら、
システムが廃れる事には無かったと思います。

疑問手のある後手に対して、先手の差し回しは見事で、
序盤中盤と的確に指してリードを奪っていった印象です。

終盤は駒が密集している中で、時間を投じて寄せを考えていましたが、
踏み込み良く行けなかったのも「藤井さんらしかったのかな」とも。
冒険してファンタしても悔しいですしね

【第二局】豊島将之 七段 vs 塚田泰明 九段
塚田さんの得意な矢倉と横歩は「準備してきました」と豊島君。
注目の戦型は矢倉へ。互いに飛車が中央に回り、先手の浮いた飛車は狭い3筋へ。

先手の7五歩に解説の修さんが「善悪関係なく塚田流は7六歩」が盤上に現れ、
ここら辺から「先手が準備してきた割には」という変調を感じる展開に。
攻め100%と言いつつ言われつつも、受けるところはしっかり受ける塚田さんの粘り強さが、
本局でも盤面を難しくしていったように見えます。

先手も悪くならないよう、後手同様に受けるところはしっかり受ける方針。
終盤は後手からも「良い手があれば」とチャンスがありそうな展開でしたが、
最後は豊島君の切れ味鋭い寄せがお見事でした。

【第三局】澤田真吾 六段 vs 髙野秀行 六段
本局は澤田君がほぼ採用していない、流行系の角換わり相腰掛け銀へ。
本人は、やってみたかった手があっての採用とのこと。
最近よくある手待ちして間合いを計る局面まで進みます。

仕掛けは後手の6五歩から。先手は空いたスペースに6四角打、9二飛、4五歩。
ここで後手が6六歩と指したのが、高野さんの「やってみたかった手」だったそうで、
感想戦では「これが失敗だった」と話していましたね。

先手は2四歩の突き捨てから両サイドを睨む4六角打。
ここから2三歩打の垂らしから2五歩打の継ぎ歩と、一貫した2筋攻めへ。
飛車が2筋に回った形は受けが難しく、そのまま先手の攻めが鮮やかに決まった形で投了となりました。

ただ、感想戦では2三歩の垂らしに対して、同玉は自然な手でしたが、
ここでは同金と取る手が上回ったようで、これだと全く別の将棋になっていた可能性の話も。

また、最終盤の後手の受けに関しても、受け方によっては先手からの決め手が見えない局面もあり、
精査してみると、色々な可能性のあった将棋だったのだなと。
感想戦の醍醐味も楽しめた一局となりました。

【第四局】阿部光瑠 五段 vs 佐藤秀司 七段
光瑠君が大きくなっていましたねえ。サイズ的に。
VTRの喋りはドワンゴの川上会長っぽく。こちらは声的に。

将棋は後手の佐藤さんがベテランらしい老獪な指し回しで、
居飛車、振り飛車を明示しない、含みのある駒組みを進めます。
力戦調の神経を使う展開となった先手は、時間を少しずつ使いながら。

ようやく居飛車が確定した後手は、雁木から厚みのある形へ。
対する先手は6六銀の形から5五歩と突いて、ここで開戦。

後手が居玉で堅さに差があるだけに、先手として「暴れられれば」と言ったところでしょうか。
2筋で角交換へと進みます。先手は7一角打から5二歩打で、馬作りに成功。
この後、後手は香損するだけに、その代償をどこに求めるか。

この後、後手は6四角など反撃を見せた手もありましたが、
受けを苦にしない光瑠君らしく、先手に価値の高い手が多かったように見えました。
右辺での攻防も先手が制したため、この挟撃形には後手投了やむなし。

光瑠君は途中まではゆったりした感じに見えましたが、
馬が出来た辺りで見通しがたったのか、本来の早見え早指しらしい手の早さになると同時に、
姿勢や眼光までモードが変わったかのように、グイグイ感全開になったのが印象的でした。

2回戦では深浦さんと当たるのでお楽しみに!

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