ジェイクールのスタッフ雑記

第26回世界コンピュータ将棋選手権 二次予選のお話

先月、山崎叡王とponanzaが対局する『電王戦二番勝負』の第一局が行われ、
その結果はNHKのニュースでも報道されていました。注目度があります。

この勝負で快勝したponanzaですが、これでも実はスペック制限などがされており、
どこまで実力を発揮できているか不明なのです。

そんな制限がない、コンピュータ将棋の世界選手権。
この大会が毎年GWに行われております。これが本題。

大会は三日間で開催され、一次予選、二次予選、決勝リーグとなります。
前回大会で好成績を残した16チームはシードとなり、二次予選から参加。

昨日の一次予選では、36チーム中、上位8チームが二次予選へと駒を進めました。
まずは、さらっとこの話を。

今回は公開された『Apery』や『やねうら王』のライブラリを使用したチームが少なくなく、
初参加でもソレを感じさせないレベルの高い大会となっていました。

特に『Apery』ライブラリを使用した『Aperyチルドレン』が旋風を巻き起こしていて、
『nozomi』が一次予選で敗退、『習甦』も滑り込んでの二次予選進出という結果に。

一つの目安としては、このチルドレン達に勝てるかどうか。
全勝で一位通過した『技巧』と二位通過の『読み太』は。今日もどこまでやるか楽しみですね。
特に前者の『技巧』は前評判が高かったソフトで、シード勢との対戦に注目です。

シード勢を相手にチルドレン達が今日も旋風を巻き起こせるのか。
本家の『Apery』に恩返しとなるか。9回戦の幕開けです。
今日はニコ生で千田五段の解説があり、主にこの話。

本当はゆっくりじっくり書きたいとこなのですが、
今が夜中もいいとこで、起きたら決勝リーグの大盤解説に一日行く予定でしてですね、
けっこう端折って書きますっ。

本命の『ponanza』は今年も流石の強さで、やはり「誰が止めるのか」という展開に。
勝ち同士がぶつかっていく中、四回戦を終わって全勝は『ponanza』と『技巧』の2ソフトとなり、
五回戦で頂上決戦が組まれました。

この『技巧』の開発者の方が午前中のニコ生にゲストとして出演していて、
質問に答えていた内容がとても面白かったです。

ソフト自体は前年の電王戦出場ソフト決定大会の時と、あまり変わっておらず、
今回はクラスター化に対応させる部分に注力していたそうです。

これがコア数が約300、メモリが約1テラというモンスター級のスペックで、
何と1秒間に2億手読むそうです。1億と3手読む男、佐藤さんもびっくりですね。
先日「羽生名人が30分で1000手ぐらい読めて凄い!」という記事があったような。

終盤は正解ががある局面もあるので、短い持ち時間でもしっかり読めるというのが強みと
言っていましたね。千田君曰く『技巧』は評価値の出かたが一番『ponanza』に近いそうです。
やはり、強者の出す答えは同じになるのか。これが真の答えに近いのか。

もう一つ興味深かった話が『技巧』は振り飛車もやるという話。
ひと昔前とは違って、最近の強いソフトは居飛車で指す将棋が多く、
これはプロ棋士とも似ているような気がします。

ここには、おそらく一つの大きなテーマがあって、
「振り飛車の飛車を振る一手自体が損になる可能性があるのではないか」
という話だと思います。

『技巧』の開発者の方によると、振り飛車には『良い振り飛車』と『良くない振り飛車』が
あるそうで、『良い振り飛車』を差す分には居飛車と遜色がないという実験結果だったとのこと。

これは居飛車だけを差す『技巧』と振り飛車も指す『技巧』でテストしたところ、
結果に差が出なかっただめ、今回の『技巧』は振り飛車を制限していないそうです。

今日見かけたのは先手で中飛車をやっていたので、
これは良い振り飛車のようですね。そういえば『技巧』に限らず、四間飛車を全くm(略
ソフトももう少し角交換四間飛車をやったら良いと思うんだ!

とまあ、短い時間ながら、貴重な話が聞けて実に面白かった訳です。
『ponanza』について聞かれた場面もあって、そこでは「まずは決勝リーグ進出が目標です」と
語っていて「当たったら、やっぱり勝てたら良いですよね」と続けて。

『技巧』は『ponanza』を倒せるのか。五回戦の対局では『技巧』が先手。
チャンスがあれば襲いかかり、相手を倒してしまう印象のある『ponanza』ですが、
この将棋では中盤から『技巧』が攻める展開となりました。

『ponanza』は受けも勿論上手いのですが、この将棋では『技巧』の攻めが上回り、
長い攻めの末、『ponanza』を黒星をつけるという大金星。
3八角は気持ちの良い決まり手に見えました。

勝負は勝ち負けだったと思いますので、この2ソフトが頭一つ抜けているのは間違いなさそうです。
『技巧』は、その後の将棋も見事なもので『NineDayFever』との対局も見切りに感心しました。
結果は一次予選に続いて、二次予選でも全勝となり、一位での決勝リーグ進出が決定。

『ponanza』も許したのは一敗だけで堂々の二位通過。
二次予選突破チームの発表時に「決勝リーグに参加しますか?」という意思確認が行われるのですが、
山本さんは「明日は倒します!」と会場の笑いを誘っていました。良い雰囲気です。

三位に『NineDayFever』、四位『大合神クジラちゃん』、五位『大将軍』、六位『Apery』。
決勝リーグでは、上位2ソフトに黒星をつけられたら優勝のチャンスもありそうですね。
『Apery』はチルドレンとの対戦をきっちり勝利していたのはお見事でした。

最後の2枠は七位『うさぴょん2』、八位『読み太』。
決勝リーグは総当たりなので、勝ち星の数だけ波乱になるのは間違いないでしょう。
どこまで勝ち星が伸びるか楽しみです。

それにしても、ずっと決勝リーグ進出を続けていた『YSS』に加えて、
『AWAKE』『GPS将棋』『激指』辺りも普通に二次予選敗退とはスゴイ時代です。

千田君の解説は将棋ソフトに精通している人だから出来る内容も多く、
素晴らしい解説でした。おかげでとても楽しい一日となり感謝です。
明日は大盤にも遊びに来てくれるのを期待しています。

それでは外が明るくなってきている気がしますが少しでもお休みします。
明日の決勝リーグの模様も帰宅後に記事にしたいなと思っております。
こちらは、ゆっくりじっくり書きましょう。

それではまた。

【決勝リーグの記事はこちら】
https://www.j-cool.co.jp/blog/?p=5391